$K<H<G$
を部分群の列としたとき、たとえば「$K\lhd G$
ならば$K\lhd H$
」ですが逆は一般に成り立ちません。こういう部分群と正規部分群のちょっと紛らわしい例をまとめておきます。
例1: 正規部分群
以下の命題では$K<H<G$
を群とします。
命題1: $K\lhd G$
ならば$K\lhd H$
である。
証明: $K\lhd G$
なので、任意の$g\in G$
に対して$K^g=K$
である。特に任意の$h\in H$
に対して$K^h=K$
なので$K\lhd H$
が成り立つ。[命題1の証明終わり]
命題2: $K\lhd H\lhd G$
ならば$K\lhd G$
であるとは限らない。
証明: $C_2\lhd V_4\lhd A_4$
だが$C_2\lhd A_4$
ではない。[命題2の証明終わり]1
命題3: $K\lhd G \ (,K\lhd H)$
ならば$H\lhd G$
であるとは限らない。
証明: $1\lhd C_2, \ 1\lhd A_4$
だが$C_2\lhd A_4$
ではない。[命題3の証明終わり]1
命題4: $H\lhd G$
ならば$K\lhd H$
であるとは限らない。
証明: $A_4\lhd S_4$
だが$C_2\lhd A_4$
ではない。[命題4の証明終わり]1
$C_2\not\lhd A_4$
が全部の反例になっています。
例2: 可換群と正規部分群
命題5: 可換群$G$
の部分群$H$
は正規部分群である。
証明: $H^g=g^{-1}Hg=g^{-1}gH=H$
より従う。[命題5の証明終わり]
補題6: $G$
の正規部分群$H$
に対して、$G/H$
が可換群$\iff [G,G]<H$
が成り立つ。
証明: 「$G/H$
が可換群」$\iff$
「任意の$x,y\in G$
に対して$[x,y]H=[xH,yH]=1H=H$
」$\iff$
「任意の$x,y\in G$
に対して$[x,y]\in H$
」$\iff [G,G]<H$
[補題6の証明終わり]
命題7: $K<H<G$
に対して、$K\lhd G$
かつ$G/K$
が可換群なら$H\lhd G$
で、$G/H$
も可換群である。
証明: 補題6より、任意の$h\in H, g\in G$
に対して$[g,h^{-1}]=g^{-1}hgh^{-1}\in [G,G]<K<H$
である。ゆえに、$h^g=g^{-1}hg\in Hh=H$
なので$H^g\subset H$
、したがって$H\lhd G$
が成り立つ。ふたたび補題6を用いれば$G/H$
が可換群であることも従う。[命題7の証明終わり]2
例3: 特性部分群
(あとで追記します)
$A_4$
の部分群の構造はここにあります [return]- MathStackExchangeに助けてもらいました。交換子の式変形がちょっと非自明な感じがします… [return]