abstract
- 名前を呼ぶとき、個人を識別する以外の情報が意図せず追加されることに気持ち悪さを感じる
- キャラクターの名前を示す場合はすでに上記の条件を満たすので、どう呼ぶかによらず気持ち悪い
- 気持ち悪いことが悪いわけではなく、オタクはみんな気持ち悪いしそれで良い
introduction
最近「たまゆら」というアニメを観て、主人公の沢渡楓(さわたり ふう)さんのことを考えている時間が一日のうち一定の割合を占めています。
たまゆらの沢渡楓さん pic.twitter.com/jwFk0KWV1L
— りとそん* (@ritosonn_dual) August 21, 2019
沢渡楓さん…
— りとそん* (@ritosonn_dual) August 25, 2019
それでこのように「たまゆら」関連のツイートする機会も多いわけですが、なんとなく作中のあだ名「ぽって」や「ふうにょん」ではなく「沢渡楓さん」とフルネーム+さん付けで呼ぶのが習慣づいてしまいました。
当初はこれを「自分が作中にいるわけではないので、自分がそう呼ぶのは違和感がある」という感じでこうツイートしていました。
作中で呼ばれてるあだ名は作中のキャラクターたちのものなので自分では呼びにくいみたいなのがある
— りとそん* (@ritosonn_dual) August 25, 2019
ただ、よく考えてみるとそうでない例外も多々あるし(ゆゆ式のツイート、縁さんだけ「さん」付け)
縁さんも水着ゆずこも唯もいないのでさみしい
— りとそん* (@ritosonn_dual) July 2, 2019
フルネーム+さん付けは拗らせオタクって感じで気持ち悪いという話もあります。
架空の女の子をフルネーム+さんで呼んでいるのとどっちが気持ち悪いのかは議論の余地がある気がする https://t.co/uo0VpOyNTT
— K. ジョサイ (@tactfully28) August 25, 2019
そういう中で、このオタク特有の気持ち悪さについて多様体+ホモロジー代数ゼミのあとに話していたので、せっかくなのでここにまとめておきます。
1. 気持ち悪さはどこから来るか
この前の「面白さというのは『いつもの流れ』からの意外性の高さと相関がある」みたいな話1と概ね同じですが、気持ち悪さもそうした「通常からの外れ値」を無意識的に取得するシステムである、という価値観は(こうして言語化されることはあまりないかもしれませんが)おおむね共有されているように思います。
一方で、名前を呼ぶという動作には、「ある人物を特定する」という無機的な情報が含まれるだけではなく、特に呼ぶ人から呼ばれる人への関係性が現れているとみなせます。つまり、特定のあだ名を使うことが、人物だけでなく特定の関係性を指し示すということが起こりえます。
たとえば「私に天使が舞い降りた!」の「みゃー姉」2は、作中のキャラクターたちに「ミャーさん」「みやこさん」「お姉さん」等様々なあだ名がつけられています。
僕はかのんちゃん3の「みゃーおねえさん」という呼び方がお気に入りですが、こう書くとみゃー姉の話ではなく「かのんちゃんとみゃーおねえさんの関係性」が想起されてしまいます。特にそういう意図がない場合は「みゃー姉」と書いておけばそこまで不自然でない2一方、この節の「みゃー姉」を全部「みゃーおねえさん」に変えたら相当気持ち悪いと思います。
逆に、声優さんのあだ名とかでわりと個性的な呼び方をしても大丈夫4なのは、そう呼んでほしいと言われていたりして、「この人がこう呼んでいる」という関係性・特定の文脈を想起させないからではないでしょうか。
ここまでの議論から、問題提起であったような「作中のあだ名だから」「架空の人間だから」気持ち悪いなどといった固定的な話ではなく、関係性の中で特殊性・気持ち悪さが変化するものだ、と考えられます。
2. 気持ち悪さをどうするか
翻ってオタクは5何かが好きであることを示すということがある種の存在意義というか、そういう周囲と異なることに対して興味があり、それを受け取ったり発信したりするという機会が多くなりがちです。
つまり、伝えようとしている内容それ自体が外れ値的なことであるので、どう呼ぼうが気持ち悪さ自体は大差なく避けられないように思います。
ここで大切なのは、別に気持ち悪くならないということを目標に置いているわけではないということです。
「気持ち悪い」と「好き」が共存しないわけではまったくない6し、オタクは気持ち悪くていい7んですよね。特に自分は、「気持ち悪いとはあまり思わないけど自意識が存在してなさそうだし興味がない」と思われることが多かったので、「気持ち悪い」と思われたとしても印象が存在するほうがずっとよいと思うし、今回の件もそう考えれば全然問題ありませんでした。
そもそも誰にどう思われていようがあまり興味ないし、考える必要のないことで貴重な日曜夜を使い切ってしまったので、このあたりで終わりにします。
conclusion
ここまでの話はどうでもいいので、dアニメで「たまゆら」を至急観てください。小さくてかわいいけど強くてたくましい女の子、沢渡楓さん(さわたり ふう/あだ名:ぽって・ふうにょん)とその周辺の穏やかな日々をていねいに紡いだお話です。よろしくお願いします。
たまゆらひととせのおかげで人間になれそう
— りとそん* (@ritosonn_dual) August 15, 2019
たまゆら観て、なんか時に対する解像度上がった感じある
— りとそん* (@ritosonn_dual) August 19, 2019
- これ記事にしてなかったですね…こういうときぱっと出せないのがよくないしあとで書きます [return]
- 「みゃー姉」はひなたが呼んでいるのでデフォルトっぽいし、みゃー姉の話題が出るときはみゃー姉と書くことが多いと思います。本名は星野みやこ。 [return]
- 本名は小之森夏音。「わたてん!」ではこよりちゃんと「かの」「よりちゃん」と呼び合っていて大好きですが、この二人だけの呼び名で作中でもほかの人は「こよりちゃん」「かのんちゃん」と呼ぶのがふつうなので本文でもそうしています。 [return]
- それ自体気持ち悪さがあるのは認めますが、1対1で呼ぶのよりは多少ましという意味です [return]
- これはあまりに風呂敷を広げすぎていて、本当は「少なくとも自分のTwitterの一部は次のような成分で構成されている」くらいの主張です [return]
- 三ツ星カラーズ2話終盤、上野の不忍池の前で「この池はくさいのに好き」「この池はくさくていいんだよ」と涙を浮かべるカラーズ赤(カラーズは名前で呼んでしまうと本格的にやばいなという気持ちがあり色で呼ぶことにしています)と同じ気持ちです [return]
- 清潔さはそこそこ気にしているつもりですが、清潔なゴキブリみたいな、概念的な気持ち悪さに関する対策をしようとしたことがない(もうどうしようもないので)、ということです [return]